おみそコラムcolumn
白味噌と粉もんのステキな関係
粉もんで白味噌を救う(?!)
~大阪樟蔭女子大学学芸学部ライフプランニング学科 フードメディア研究の授業から~

 今回私達は、白味噌を使った新しい料理を授業(フードメディア研究)の中で考えることになった。そこで、白味噌との意外な組み合わせをと、模索した時に思いついたのが粉もんとの相関であったのだ。粉もんは、タコ焼き・お好み焼きをイメージするようにソースで味付けするのが大半で、味噌を用いる印象が全くなかった。そこで女子大生の発想として白味噌×粉もんで新しい料理ができないかと思った次第である。

 現在、関西では味噌の消費量が減少していると聞く。全国味噌消費ランキングを見ても41位以降の下位をほぼ関西が占めている。なぜ関西で味噌の消費が少ないかというと、古くから関西にはだし文化が根づいているからだ。関西は、関東に比べて水が軟らかい。そのために昆布だしが摂りやすかった。味噌を多く使うと、肝心の昆布だしの味がかき消されてしまう。昆布だしをいかそうと思えば、必然的に味噌の量が少なくなってしまうのだ。
 味噌の起源は、古代中国の醤(ひしお)だと考えられており、今でいう日本の味噌が現れたのが平安時代。伝わった地域までは特定されていないようだが、多分に都が京にあったことから関西に根付いたものと思われる。当時は庶民にとっては贅沢品だったので貴族間で使われたのであろう。なにより今回のテーマである白味噌は、京都が発祥地。今でも京料理には欠かせぬ調味料で、だしをいかす文化が根づく関西といえども古くからよく用いられて来たのである。今回、私達が授業で使った白味噌を産する六甲味噌製造所は、兵庫県芦屋市にある蔵。創業百年の老舗で、阪神間の味噌として評判を呼んでいる。同蔵では、国産米に、質のいい大豆と、原料にはこだわっており、中でも人気の「完熟みそ」は、兵庫県で穫れる蛇紋岩米を使用している。高コストで手間もかかるため、他メーカーなら計画時点で商品化を諦めてしまうのではなかろうか。「完熟みそ」を製造する六甲味噌製造所では、こだわりを貫き、良質の味噌を開発するためなら手間も惜しまず造っていると聞くから思わず脱帽してしまう。このような味噌蔵が私達の身近にあるのに、その良さを訴求せぬ手はない。ひいては、関西での味噌消費量減少に歯止めがかからないか?この大上段に構えたテーマ(!?)から白味噌×粉もんの中でも関西らしさがあるタコ焼きに白羽の矢を立てたのだ。

 昭和10年に大阪の今里新地で誕生したタコ焼きは、味噌に比べると当然、歴史は浅い。味噌からすれば、いわば若者にあたる。この若者を使って、私達若い世代が古くから日本に伝わる味噌を、新しい形で広めたかった。
 タコ焼きは、ラジオのチューナーに似ていたこと、ラジオが当時ハイカラな機械だったことからそのルーツはラジオ焼きと呼ばれていた。ラジオ焼きは、タコではなく、すじ肉が使われていたそうだが、ある日、明石から今里新地へ遊びに来た客が「なにわは肉かいな。明石ではタコを入れているで」と言ったそう。それがきっかけとなり、会津屋の遠藤留吉さんがタコ焼きを誕生させている。味噌が関西で減少する理由は、だしをいかす文化に因があると言ったが、タコ焼きは元来、明石焼きのようなだしに漬けて食べるものではなく、ソースで味わうのが主流。会津屋は醤油味なのに、なぜソースが主流になったかは定かになっていないが、当時ハイカラだったウスターソースを漬けることで、ハイカラな食べ物として売り出したとの説もある。昭和30年頃はとんかつソースの普及により、洋風がうけた時代なので、ソースを漬けることで洋風を醸し出したのではないか。こうして考えると、タコ焼きは、関西のだしをいかす文化とは別の所にあると思われる。なので味噌の消費量減少の原因であるだしを消してしまうという点においても心配はない。さらにソースという濃い味付けが好まれていることからしても、タコ焼きとの相性はいいのではないか。また、粉もんの一種であるお好み焼きは、安土桃山時代に味噌を塗って食べていたことから、粉もんと味噌は無縁というわけではない。むしろあまり商品化されていないことの方が不思議なくらい。そう、粉もんと味噌は出合うべくして出合った組み合わせなのだ。

 私達が考えた「四角い白味噌タコ焼き」は、白味噌を生地に混ぜるのではなく、白味噌の塊を先に入れて軽く焼き目をつけてから生地を入れて焼いている。最初は、生地に混ぜて焼こうとしていたのだが、それでは生地を焼いた時にタコ焼きのようにうまく固まらないことがわかった。これは意外であった。そこで塊を入れてみることになり、試作してみると、白味噌の風味がいい具合に感じられたのである。先に味噌に焼き目をつけることで味噌のこんがりとした風味も得られ、一石二鳥のように映った。
 タイトルにもあるようにこのタコ焼きの特徴は、四角い形にある。なぜ丸いものを四角くしたのかというと、見た目でも新しさを追求したかったのと、どこの家庭でもそれを作ることができるようにと考えたからだ。見た目においてタコ焼きは“丸い”のが当たり前になっている。そんな中で“四角”は斬新に映るだろう。次にどの家庭でもできるという点では、まず家庭にタコ焼き器があるとは限らない。だが、玉子焼き器ならあるという家庭は多いだろうし、ないとしても一般的なフライパンで代用できる。さらにフライパンならタコ焼き機に比べて用意するのも片付けるのも楽なのだ。このように私達の考えた「四角い白味噌タコ焼き」は、これまで世間になかったもので、なおかつ簡単に家庭でもできる一品なのである。

大阪樟蔭女子大学学芸学部ライフプランニング学科 中尾 星
四角い白味噌タコ焼き
[Aチーム:竹中優佳、樽谷優花、中尾 星、中嶋咲七、松本佳子]
【材料】作りやすい分量
ゆでダコ・・・160g
青ねぎ・・・・適量
桜エビ・・・・適量
薄力粉・・・・200g
卵・・・・・・3個
水・・・・・・400ml
白味噌・・・・適量
サラダ油・・・適量

【A】
 顆粒だし・・小さじ1/2
 しょうゆ・・小さじ1/2

水・・・・・・150ml
塩・・・・・・少々
【作り方】
① ゆでダコは一口大に切る。青ねぎは小口切りにする。
② ボウルに薄力粉、卵、水を入れてよく混ぜ合わせる。
③ 【A】の材料を小鍋に入れて中火にかけ、煮立ったら火を止める。
④ 玉子焼き器にサラダ油を熱し、ひとつまみの白味噌4個を並べ、
 焦げないように数秒焼く。
⑤ 焼けた白みそがかぶるくらいの②を流し入れ、白味噌と同じ場所に
 ゆでダコを並べ、青ねぎと桜エビを全体に散らす。
⑥ 生地に火が通ったら、玉子焼きの要領で巻き、巻けたらまな板に移して
 好みの大きさに切る。
⑦ ⑥を皿に盛り付け、好みの食材をトッピング(ゆでダコや青ねぎなど)し、
 ③のだし汁をかける。
大阪樟蔭女子大学 学芸学部ライフプランニング学科フードメディア研究 Aチーム/竹中優佳、樽谷優花、中尾 星、中嶋咲七、松本佳子(※順不同)