おみそコラムcolumn
白味噌には、七難隠す働きがある!?
味噌には、地域性がある。 手前味噌なる言葉は、家庭でよく味噌づくりを行っていた頃、「うちの味噌が日本一」とばかりに自慢したことから生まれたものだ。 地域で見ても米味噌・麦味噌・豆味噌と地域特性があったり、辛口味噌・甘口味噌・甘みそと味わいが違うために、語源とは異なるが、たとえ購入する味噌メーカーのものでも、その地域の“手前味噌”が存在するともいえなくはない。
味噌を色で見ると、赤系味噌・淡色味噌・白味噌の三つに分類される。 それらの色あいは、大豆などの原料の種類によるものもあれば、大豆を煮るか、蒸すか、はたまた糀(麹)が多いか、少ないかなどによって違って来るようだ。
元来、白味噌とは、短期間で熟成して造るもので、赤味噌と比べると、塩分濃度が低くて甘みを有して、その名の通り色は白い。 明確な定義はないものの、味噌を造る過程で大豆を煮る点が赤味噌と異なる。 関西や中四国の一部で造られてはいるが、大豆より米の比率が高く、関西では塩分が5〜6%とされているようだ。 白味噌は、味噌の中で唯一、酵母菌を製造させておらず、米糀の糖化力で白味噌の特徴の一つである甘みを作り出している。 六甲味噌製造所・長谷川憲司社長の話によると、「米・大豆・塩の材料を全て混ぜ合わせ、約50℃で熱つ仕込みをしている」という。 それは、糖化させることと、酵母による酒化を止めるためである。 近畿地方では、白味噌の仕上げは丁寧に臼で挽いてペースト状にする特有な製造方法で造る。 「関西人は、汁を飲み干した時に底に残るのを嫌います。 口当たりも滑らかなのが好みなので、そのためにきめ細かく仕上げるんですよ」と言う。
一般的な白味噌には、脂質、タンパク質、ビタミンB6・B 12・C・D、タンパク質、鉄分、マグネシウム、カルシウムなどが含まれており、100g当たりのカロリーは約217kcalあるといわれている。 甘口になるのは、米糀を多く用いるからで、地域によってその風味も異なって来る。
「六甲味噌製造所」の「芦屋蔵造白味噌」は、手間をかけて扱った糀を大豆の倍の量を用いて仕込むことで、滑らかで甘い香りがまったりと広がる上品な味わいを作り出しているのだ。
また「芦屋そだち白味噌」は、兵庫県産米と兵庫県産大豆の地元素材にこだわって造っており、糀が大豆の倍以上使っているので、糀の甘い香りがいきており、絹のような滑らかな食感とまろやかさで自然な甘さを醸している。 食べたときは甘いが、甘さがいつまでも口の中に残らないのが特徴である。
味噌は、中国の醤にルーツを持ち、歴史の中で日本人が独自の工夫を加えて発展したものだ。 「大宝令」(701年)に“未醤”という記述があることからして古代からあったと思われるが、調味料として本格的に使われ始めるのは、鎌倉時代を待たねばならない。 平安時代は、食べ物にかけたり、つけたりする使い方で、薬用にも用いられていたそう。 鎌倉時代に味噌汁が登場することで、一汁一菜という武士の食事形態が確立し、調味料として使われて行く。
白味噌がいつ生まれたかは定かではない。 ただ、京で発祥したといわれており、それが関西の他の地域や瀬戸内海沿岸地域に伝播していったようだ。 平安期にはすでにあったとの説もあり、王朝文化の中で育まれたといわれている。 甘い白味噌は、贅沢品で貴族の間では持て囃されたのだろう。 関西や瀬戸内は温暖で、米がよく穫れたため、米をたっぷり用いる白味噌が造られた。 現在、白味噌が造られているのは、大阪・兵庫・京都・岡山・広島・香川・徳島の二府五県。 これらの地域は平家の落人が散っていった場所で、美食の彼らは、少しのものをきれいに食べる習慣があった。 それで白味噌を好んだと思われる。 そんなことから白味噌文化圏が成立していったのだろう。
白味噌といえば、すぐに思い浮かぶのが関西の雑煮。 京都市内ではほとんどがこの手の雑煮を正月に味わう(大阪では半数以上が白味噌の雑煮だといい、兵庫では瀬戸内側にその習慣が顕著に出ている)。 今では一般家庭において「正月が終わったら白味噌を持て余す」との声も聞かれるが、そう言う人はその使い方を正しく理解していないからかもしれない。 例えば、雑煮を作った後の時季に白味噌が残ったら、普段の味噌汁に混ぜて使ってみるといい。 冬によく用いる根菜類は甘い味噌が合い、白味噌を多くすることで汁自体が旨く感じる。 そこに塩味のある赤味噌で味を締めてやるのだ。 夏は、その逆に赤味噌を多くする。 春秋は半々にして味わうのが旨い味噌汁の作り方とされている。 白味噌の甘さは、春の七草や、菜の花、筍の木の芽和えの調味にも最適。 個性の強いものや苦みを柔らげる効果を持つと覚えておくといいだろう。
味噌汁を温め直す時は、そこに白味噌を足すといい。 甘みは七難隠すとは、まさにこの通りだ。 単に甘みでだけでなく、白味噌には色々な効用があるのだ。 使い方次第で、食を豊かにすることができるだろう。(2021/10/06)
(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
白味噌レシピ
〈お肉×白味噌〉
まろやか焼き豚
豚肉を白味噌ベースのたれに漬け込んで、白味噌のまろやかなうま味と塩味をなじませます。仕上げに、味噌だれを煮詰めたものを添えて白味噌を無駄なく食しましょう。
豚しゃぶの白味噌仕立て
しゃぶしゃぶというと昆布だしのイメージですが、白味噌ベースのだしもおすすめです。肉や野菜の種類はお好みで。身体の芯から温まります。
白味噌入り松風焼き
お節料理に欠かせない松風焼きは白味噌で風味づけ。表面だけにケシの実をまぶして、裏面には何もしないことから、隠し事がなく正直に生きられますようにとの願いを込められているそう。
鶏肉と根菜のシチュー白味噌仕立て
調味料は白味噌だけというお手軽なシチュー。鶏肉とたっぷりの野菜を煮込んだシチューは栄養バランスがよく、お子様にもおすすめです。
〈魚介×白味噌〉
鮭の味噌マヨ焼き
白味噌にマヨネーズを組み合わせてまろやかな味わいに。パプリカなどの野菜を味噌マヨソースに加えると華やかに仕上がります。お弁当のおかずにもおすすめ。
蟹と葱の酢味噌和え
白味噌を使った酢味噌は適度な塩味と甘さが後引く美味しさ。お好みで和辛子やすだち等の柑橘類を加えてもいいでしょう。今回は蟹と葱を使っていますが、合わせる食材はお好みでどうぞ。
ほうれん草と鮭の白味噌キッシュ
意外にも白味噌は洋風の料理ともよく合います。濃厚な玉子とチーズをたっぷり使ったキッシュのアクセントに白味噌を。市販のタルト生地を使って簡単に仕上げます。
サーモンムース 白味噌風味
白味噌を使ったオシャレな前菜。一見、難しそうですが材料をフードプロセッサーで混ぜるだけととても簡単。サーモンと白味噌の相性は抜群です。
〈定番の汁もの〉
みそ汁
白味噌ならではのやさしい甘さとコクが広がります。白味噌の香りをいかすために、味噌を溶き入れた後は、加熱しすぎないようにしてください。
かす汁
冬の定番料理・かす汁には白味噌を使って、やさしい味わいに仕上げています。具材はサケや大根などを使っていますが、冷蔵庫にある野菜を入れて作ってください。
〈スイーツ〉
台湾カステラ
白味噌のやさしい風味と甘さが口いっぱいに広がります。焼き立てはふわふわでシュワっと溶けるような食感、翌日はしっとりとしたカステラが楽しめます。